【2017年6月25日】特別展示 御手杵の槍 写し、上林恒平刀匠ギャラリートーク(致道博物館)【後編】
ここからは、致道博物館にて開催中の『日本名刀展第二部 「平成29年 新作名刀展 ~ 現代の刀工と刀職 ~」』で特別展示されている、上林恒平刀匠作 御手杵の槍 写しに関して述べていきます。6月25日付の致博レポートの後編となります。
前編はコチラ。
さて、御手杵の槍 写し(以下、御手杵)を作刀された上林恒平刀匠、ご出身は藤島町(現・鶴岡市)とのことで、今回の御手杵公開とギャラリートークを開催していただく流れとなったそうです。
御手杵作刀が始まったのは昨年秋、今年4月には前橋東照宮にて、打ちあがったありのままの姿が公開されていましたね。
控えめに言って御手杵さんの追っかけだからね、会いに行きましたとも。
そして今回、刀身の研ぎに入る前の御手杵が、致道博物館にて新作日本刀展の期間限定で公開されています。(7月2日まで)
まぁ前置きはこの辺りで... ここからは、おれのミラーレス一眼が火を噴くぜ!!!
細かいことは、
ど~んの!
ぱ~んの!
ぼ~んにございます!
失礼をば... おんな城主直虎にすっかりハマっておりまして ( ˘ω˘ )
相変わらずまっさらな鉄がいいですねぇ、古刀では味わえない良さだと思います。
それにしても、前橋であそこまで碧く見えた(撮れた)のって何だったんだろう... 今回もまだ青みがかっているけれど。
前回との違いは、きれいに鑢(やすり)がかった茎。きれいになっちゃったよう!
前橋で見た錆色も味があったけど、そこはさすが鉄、磨けば光る...! 新しいっていいよねぇと思う部分でもありますね。
上林恒平刀匠ギャラリートーク(抜粋)
ここからは14時より開催されたギャラリートークの様子をお伝えします。上林先生が解説するというよりは、会場内での質疑応答で何でも聞いてねというスタイルでした。
こちらもすべてレポートしてしまうと長いし、面白みがないので、印象深かった内容をピックアップ。
●御手杵作刀の大変さについてお聞かせください。
→とにかくその重量。
作業には一連の流れがあるが、刀より重いため(4.1 kg)、台から移す、火に入れる等がいつもの流れでできず、一度中断せざるを得ない。(流れ=テンポと筆者は解釈)
一方で、言葉通り鉄が熱いうちに打てるのは新鮮で面白かった。
●写しをよく作刀されるのか? また、写しを作るにあたって心掛けたことは。
→作数は多くはない。
以前、ソハヤノツルキの写しも作刀したが、若い頃は形を真似る、刃文も深く考えずにやってきた。これが刀を理解するようになると厄介になった。古きを思いつつ、自分の作風を大事に。
●刀匠として感動した刀は寺沢貞宗(国宝)、愛刀家として好きなのは兼光。また、刀匠 堀川国廣に憧れているとのこと。
●作刀の上で重要視されている点は?
→「刀イコール道具」に合致していること。
刀を美術品として捉えるのは一つの見方だが、刀が美しいのは当たり前。道具でありかつ美しく。名刀は見てすんなり入ってくるもの。
●刀匠と研ぎ師の相性というものはあるのか?
→自分の作った刀を生かしてくれる、表現してくれる人に任せている。
●御手杵の研ぎはどなたに依頼するのですか?
→まだ決めていない。あれは大変ですよー研ぎ台に乗らないから。
(ここで会場から笑いの声。筆者もツボにはまり撃沈してました)
●昨今のブーム()について思うことはございますか?
→自分の修行時代にも、作業場に熱心に見に来る若い女性はいましたよ。
(良いものはどんどん見たり学んだりしてください、といったことを仰ってました)
●現代刀匠が目指す先について、先生からアドバイスは?
→師匠を踏み台にしなさい。目標にしてはいけない(師匠のようになりたいです、は×)
●先生が刀と向き合う時は、普段のお人柄のような感じですか?
→若い頃は緊張してしまい、作業中、近くに人がいると駄目だった。
今でもあがり症ですよ。火入れの時など、作刀の上で緊張する瞬間はある。作り続けていくには「居直る」ことが大切。自分の腕と理想のギャップを知る、でも上を目指す。(これしかできないと諦めることではない、ということと思います)
●作業中うまくできなかった場合は、その刀に修正を加えるのでなく最初からやり直す。通常、何本か作ってうまくできたものを完成させるのだが、御手杵は一発勝負。
●名刀は姿から。頭の中でいかにきれいな絵が描けるかが重要。
●今回の名刀展で様々な刀を見たが、銘入れにも何かルール(様式)はありますか?
→人による。自分は例えば吉光のように、とつとつとした(淡々とした)銘が好き。なのに先日、客のオーダーで表に32文字刻むことになって参った。
(ここでも会場で笑い)
こういった内容でした。約1時間、ざっくばらんなトークで会場は盛り上がりました。
中には上林先生だからこそ至った境地と言うか、鑑賞者でしかない我々に当てはめる訳にいかない部分もあるけれど。日々仕事をして食っていく上で、個人的に頭に留めておきたい言葉もありました。
それにしても御手杵の重さがここまで足を引っ張るというか、いじられる要素になるとはなぁ(苦笑)
今回の内容はここまで。
2回目のギャラリートークは本日、御手杵の公開は明日までという、宣伝としては手遅れかもしれないけれど、新作名刀展はまだ会期あるし巡回するようなので、参考になりますれば...!
ご覧いただき、ありがとうございました。