【2017年4月16日】前橋藩主松平大和守家顕彰祭(天下三名槍 御手杵の槍サミット)
この記事は2017年4月16日、前橋東照宮(群馬県前橋市)にて執り行われた「前橋藩主松平大和守家顕彰祭(天下三名槍 御手杵の槍サミット)」に参加した際のレポートです。
昨年の秋頃から、山形の刀匠・上林恒平(かんばやし つねひら)氏による御手杵の槍復元プロジェクトについて情報が流れていました。
確認できる第一報?
上の続報
また、大盛況の後に先月閉幕した『音にきこゆる』(島田市博物館)においても、上林氏によるスペシャル座談会が開催されるなど、たびたび注目されてきた「御手杵の槍 写し」。
その姿がついに、前橋東照宮にてお披露目されることになりました。やったー!
群馬県前橋市|第1回前橋四公教養講座および前橋藩主松平大和守家(やまとのかみけ)顕彰祭を開催します (前橋市公式サイトへリンク)
年度はじめでクソ忙しいけど、予定つけて絶対行く!と待ちに待ってたイベント。早速レポートしていきたいと思います。
なお、前橋東照宮および昨年参加した御手杵の槍(レプリカ三作目)の奉納祭禮については、以下のレポートをご参照ください。saniwanakaaki.hatenablog.jp
はじめに『前橋四公教養講座』の趣旨として、上記リンクの説明によると
>前橋市では昨年、前橋ゆかりの名門四大名家である「酒井雅楽頭(うたのかみ)家」、「松平大和守家」、「秋元越中守(えっちゅうのかみ)家」、「牧野駿河守(するがのかみ)家」の顕彰並びに墓所の国指定を目指すとともに、「歴史都市まえばし」の発信を目的に、「前橋四公祭」を初めて開催しました。
>前橋四公祭は今後も継続する予定ですが、そうしたイベントに加え、各大名家と前橋の関わりや、現在の前橋の基盤がどのように築かれたのかをより多くの方に知っていただくため、各大名家の顕彰イベントとあわせて「前橋四公教養講座」を連続開催していきます。
とのこと。ちなみにイベント後の時間軸で言ってしまうけど、「今後も前橋でこういったイベントを継続していきたい」という話も聞こえました。
個人的に、ここ1年であちこち訪れた際に意識するようになった、地域の歴史や魅力の掘り起こしと集客への結び付け。エビデンスに乏しいとこじつけになってしまうし、さじ加減が難しいのもよくわかるけれど、うまく地域に根付いてくれるといいですね。
閑話休題。
御手杵の槍サミット
仙台ー前橋のアクセス。今回は大宮まで出た後、北陸新幹線で高崎へ。両毛線に乗り換えて目指しました。うまく接続すれば3時間以内で到着できます。
おはよう前橋 pic.twitter.com/ELjd5x0VcD
— ナカアキ (@nkak0815) 2017年4月15日
前橋駅から東照宮へはバスでも行けますが、前回歩いてみて問題なかったので徒歩にしました。県道10号線から先がゆるい上り坂である以外は平坦なので、30分弱とはいえ比較的ラクに行き来することができますね。
す で に い る pic.twitter.com/bD1ccgYWsY
— ナカアキ (@nkak0815) 2017年4月16日
うひゃーい、御手杵ファン機動はやんい!
東照宮着が9時20分、この時点で5、6人が列を形成していました。お参りをすませた後、展示開始の10時まで待機していると、徐々に後続が伸びていく。
そして10時すこし前、社務所2階へ案内されました。ご対面でござる。
長いー!! そして思ったより細い!!
いや、どうしても結城杵が脳に刷り込まれているもんだから、比べてしまうよねぇ。
ともあれ、上林恒平作 御手杵の槍(復刻)とご対面です。
「できたて」と言っていいのだろう清らかな柾目肌。
スタッフの方によると、刃はついていないとのことだけど、うっすら刃文が確認できる。気がする!
なんとなーく見える... かな?
三角錐の刀身の三面ともに通された樋は浅く、これも今後の研ぎでパキッと印象が変わるんだろうなぁ。
こちらは茎。まだ銘や目釘穴のない状態です。
このあと何度か観賞したのですが、初回で夢中になったのがこの茎でして、
この碧いかがやき!
鑢のかかった鉄の中にビスマスのような色合いがとても綺麗で、他の皆さんが穂先に見とれている間に角度を変えてずーっと茎ばかり見てました。
槍の穂先。切先にもうっすら刃文が見てとれました、気がします。
切先を正面からと、下から仰ぐように。三角錐の頂点は、うーん三角形... かな(自信なし)
穂先を上から。いやぁこれ刺しますわ、刃がついてないとかそういう次元じゃないですな。高速槍を殺すマンですわ。
ひとしきり観賞した後、1階へ。授与所となりのスペースで刀剣を展示しているのを思い出し、今年も見てきました。
短刀 銘 上州住人恒厳作 平成廿二二年三月日
高橋恒厳氏は前橋市の刀匠で、今回「式部正宗」打ち初め式で上林氏の先手をされていました。
きめ細かでいい肌していらっしゃいました。
刀 銘 上州住人恒厳作 平成二十七年三月日
板目肌は見ていて落ち着きますなぁ。見ながらなんとなく、今回復刻される式部正宗に想いを馳せてみる。
あまり正宗を数見てきていないので、相州伝だからこう!っていう作風がイメージができないのだけど、どんな刀に仕上がるのかなぁ。御手杵さんを見た後だから、素直に楽しみになってきました。
槍(松平大和守家家臣 有賀家所蔵)
有賀家の疎開で戦火を免れた一筋。小ぶりながら造りがいいように見えました。
うんうん、これが普通の槍だよ... 三名槍が三本とも規格外なんだよ! と変な感慨にふけるなど。
ところで本日は御手杵サミット、我らが御手杵さんは一振りではなかったのです。 社務所を出ると拝殿の右手にテントが設置されていました。
テント内には結城蔵美館所蔵、島田市博物館帰りの御手杵の槍(レプリカ一作目)と熊鞘。
そしてテント外には「松平大和守」(イラスト:井田ヒロト氏)のパネル。よく見ると見慣れたフォルムの何かが刺さっている。
しかもお前、カラーコーンやないかカラーコーン!!!
※参考文献という名の元凶
あまりのアレに「これは報告しなきゃ」とスマホを取り出そうとモタモタしている間に、
撮影前までカラーコーン先輩寄り添ってたのにどけられたよ…
— ナカアキ (@nkak0815) 2017年4月16日
時間が経って少し人の流れが落ち着いてきたので、もう一度社務所の御手杵を観賞してきました。
茎といい、やたら緑色に写っているけど、ほとんど見えていたままの色合いです。おそらく明かりの影響なんだろうけど、脳内の御手杵さん(刀剣男士)フィルターかかっているんじゃないかとちょっと疑うほどに、光を発するというより包むような刀身の印象は「柔らかい」。
初めの方の写真でも少し緑かかっているから、鉄そのものの輝きでもあるのかなぁ。
前橋文学館 「吉田松陰の短刀」展示
さて、奉納演武まで時間が空いたので、東照宮を離れて別の場所へ向かいました。
前橋出身の詩人・萩原朔太郎の足跡を紹介する前橋文学館では、3月31日から吉田松陰ゆかりの品とされる短刀が公開されています。
前橋文学館は東照宮から歩いて15分ほど、広瀬川沿いの建物になります。
短刀は入ってすぐの1階展示スペースで、拵などと共に公開されていました。
短刀 銘 〇州住人國〇作
室町時代に造られた槍を短刀に改造したもの。
吉田松陰の活躍した幕末には、勤王の志士が南北朝時代に南朝方についた菊池一族にちなんで「菊池槍」を短刀に仕立てて携えたとされるが、本作の形状は菊池槍ではないとのこと。
松陰の妹であり、初代群馬県令 楫取素彦の妻・寿が、生糸の販路開拓のためアメリカへ渡る桐生出身の実業家 新井領一郎に贈ったという来歴が、新井の孫の著書に記されているそうです。今回、アメリカ在住の新井氏のご子孫が前橋市に寄託されました。
所々、資料である著書『絹と武士』の内容と合致しない要素があるようです。(國〇の人名が、著書と判読できる文字とで異なる等) かといって否定しきれる材料もない。
真贋と表現するのも変だけど、海を渡れなかった松陰の代わりにアメリカで過ごしてきた刀が帰ってきたと思うとすごい縁だなぁと。よくぞこの綺麗な刀身を保ってくれたなぁ。
短刀の拵。
柄頭や縁には獅子の細工。鞘には控えめに牡丹の蒔絵。
小柄も公開されています。金色に輝くのは橘の実ですな。
展示ケースに照明はありませんが、館内は明るく天窓からも日差しが注ぎ、観賞には困りませんでした。刀身、拵とも5月7日まで展示されているので、 お近くに寄られた際はぜひご覧になってみてくださいね。
そうそう、常設展示もよかったです。萩原朔太郎おもしろい人だったんですねぇ。
現在開催中の企画展は、平成28年に前橋文学館館長に就任した、朔太郎の孫である朔美氏の展示です。
萩原朔美の仕事展 vol.1|前橋文学館(企画展・催し物情報)
文学館の展示を味わった後は、東照宮に戻って奉納演武(槍)、そして式部正宗の打ち初め式を見学しました。
前橋市内、すでに桜が散り始めていたのですが、打ち初めの祭礼が始まると花びらが舞い散って。式部正宗が祝福されているような、参列者みんなが鍛刀しているような心地になりました。いい刀になれよー!
有志によるまとめ。奉納演武や打ち初め式の動画もアップされています。ありがとうございます!
オマケ
前橋駅構内にアンテナショップがあったので、高崎駅とあわせて色々お土産買っちゃった。
だるまショッキング。
高崎駅にて購入。春の限定色ですって奥様。